matsumushisou’s blog

映画やドラマと日々の生活

男の病室

父が愚痴を言う

向かいの人は夜中になると
「おかあちゃん、おかあちゃん」ってうるさいんだって

隣りの人なんて、私がお見舞いに行っている時に寝言だと思うけれど
「おしっこ漏れちゃったよぉ~~」
てなことを叫ぶから
ナースコールが届かないのかなと思って覗くと
スースー寝ている

廊下側の一人は
身体が全く動かないみたいにうわうわ言って
娘のような人が来ると
食事の世話をしてもらっている

もう一人の人は
折りたたみ椅子に腰をかけてパソコンをいじって
自分が仕事をしないとかみさんに任せておくと
とんでもないものを仕込んで来る
取引先には
病気だって思わせないようにしないと足元を見られるって
怒鳴り散らしている
かと思うと死んだように寝ているんだけど

そこに行くとリハビリに勤しみ
看護士さんと俳句のやり取りをして静かに過ごしている父は
表彰ものなのだが、
それにしたって周りのわがままに
「うちだけだよ
毎日人が来ないのは
母さんが元気だったら、毎日来てくれたのに」

ちょっと待ってください。
前回も前々回も一日も欠かさず誰かしらお見舞いに行って
多い時は一日に何度も何人も行ったではないの

今回は母のリハビリがあるので、週に二回はそれに付き合い
週に一度は、歯医者に付き合っている
そしてまだたったの三回だけど母も連れて来ている
しかも
父の病院まで一時間はかかる
朝、母の施設に行って、母のリハビリに行って昼ご飯を澄まして父の病院に行く
いつも駐車料金が500円以上かかるのも父がすぐに帰してくれないからだ
どの患者さんもみんな毎日、奥さんが来ていると言うから
お見舞いが欲しければみんなに連絡するよと言うと
「こんなみっともない姿を見せたくない」
あまりのぐずぐず言うので
母が入院している時はほとんど同じ病室の人のところに誰も見舞いに来ていなかったよ
母が二週間入院している時にだって父は一度か二度だけだったし
クリスマスだからプレゼントがしたいって言う父の希望で
母の頼みではなかった。

昨日はリハビリも見学して行くようにと言うから
見に行った。

隣りのベッドのおじさんも向かいのおじさんも元気にリハビリしていた。
こんなに動ける人たちなんじゃない。
こういうところでは、毅然としているし
病室とえらい違い

で、父は椅子に座ったまま足首に一キロの重りをつけられて
担当者がいなくなった。
母は自分のリハビリに来たのだと思って、手首を動かすグーパーグーパーをやっている。
父は重りをつけられたまま歩くわけでもなく
ただ座っている。
しびれを切らしたかトイレに行きたいなんて言っている
担当者がやって来て重りを外して
ボールをまたの間にはさみ、
ゴムバンドのようなもので両足をしばる。
またどこかに行ってしまいそうなので、
「すみません。これってつけているだけで動かさなくていいんですか?」と聞くと
さっきのもなんか動かさなくちゃいけなかったみたいだ。
ボールに力を入れたり、力を抜いたり、ゆっくり30回やるようにと言って
他の人のところに行ってしまった。
家族がいることで父が集中できないようなので、
帰ることにした。

自分も入院したけれど、病院って帰るまでにある程度体を元通りにするところだから
割と規則正しく、体を動かしたり、休めたり
面会時間だって必要なものを持って来てもらうだけで
すぐにリハビリのために病院中、歩き回っていた。
女性の病室なんてみんなそんなものだった。

父に言われて、男の病室(父の考える病室)には、毎日お見舞いがあるのが普通なんだと
父だけでなく、父のいる病室全体が、そういう考えで過ごされているのだと
改めて知った。