matsumushisou’s blog

映画やドラマと日々の生活

猿の見る夢 桐野夏生  実家の相続問題

薄井正明、59歳。目下の悩みは社内での生き残り。そんな彼の前に、妻が呼び寄せたという謎の占い師・長峰が現れる。この女が指し示すのは、栄達の道か、それとも破滅の一歩か…。『週刊現代』連載を単行本化。
【「TRC MARC」の商品解説】

これまでで一番愛おしい男を描いた――桐野夏生
自分はかなりのクラスに属する人間だ。
大手一流銀行の出身、出向先では常務の席も見えてきた。実家には二百坪のお屋敷があり、十年来の愛人もいる。
そんな俺の人生の歪(ひず)みは、社長のセクハラ問題と、あの女の出現から始まった――。



人によって注目するところは違うのでしょうけれど
私の場合は
なんと言っても
主人公家族と妹家族との母親の相続問題

主人公、薄井正明。色々なことを手堅くうまく立ち回って来たと思っていた
桜上水にマンションを持ち、青山に住む愛人ともうまくやり
実家の土地を利用して息子夫婦と共同で二世帯住宅を建てる計画もある。
会社でも社長と会長の間に入って、うまくすれば常務昇進、そうなれば
65歳までは安泰だと思っていたが、
ある日
母親の面倒を母親の隣に住んで介護をして来た
妹から
母親が亡くなったとの知らせ
男の思惑とは違って
母親は認知症になったと思った時に
家の土地を担保に銀行からお金を借りて
自分の介護費用にしていたことが判明
10年ほどでほとんど使い果たし貯金通帳に
葬儀費用、母親が済んでいた家の解体費用に充てるくらい
お金が残っているのみ。
そうなると母親の土地に住んでいる妹の家だけが
相続の対象となるのか?
しかし、妹夫婦は自分たちで家を建てていたことが解り
残りは、その家が建っている土地は母親のものだろうと
主人公はやっきになる。
土地の値段を計算して法廷相続分を寄越すように
妹に言うが。

母親が発症してから一度も介護に来なかった男の家族
それなのに、
主人公は、会社の手前もあるからと
会社からの手配の葬儀社に変更させ、
会社の人たちに受付をさせ
妹さんはどんな気持ちだったんだろう。
それなのに、
足りない葬儀費用は折半

もう読んでいて、
一人で介護しているのが嫌になるくらい
分からず屋の兄
病院に入院してからも一度も行かず
喪主の挨拶だけして
会葬者からは、苦労をねぎらわれて
よく相続のことはちゃんとやっておかないと
いざとなってから揉めると言うが
正に、亡くなったその日からいざこざが始まる。

まあ、この物語はそれだけでなく
奥さんと彼を取り巻く女性たちの話も出てくるのだが、

やはり、介護なんて
ねぎらってもらおうなんて思いながらじゃやっていられない。
介護する側としては、
親たちとの思い出作りとの思い
介護にあたった人に対しては
ちゃんと対価を支払うなり、
何か便宜を計らないといけないと思う