ケアマネさんが来る
夕方ケアマネさんが来ることになっていた。
それなのに、父と母はゆったりとくつろいでいる。
年を取ると匂いにも鈍感になるらしく、
いつかはトイレのあと流さずにいてすごい匂いを放っていることがあった。
そこまでは、行かずとも可燃ごみを大きなゴミ袋にザクッと入れてあるので
部屋全体に臭う
匂いの発信源である洗濯物がないか、ベッドの下や、家具の影を確認してから
ゴミの整理
お惣菜を買って来ることが多いせいか、パック類のゴミが多い。
洗って、小さくしながら話の相手をしている。
父が思い出の詰まった風呂敷を出して来た。
なっている。
野球の背の高い投手というくらいしか知らない。
どこで会ったのかその色紙を母に見せているのだが、母の手は異常に
湿り気があるので、切符なども持たせておくとクシャクシャにしてしまう。
父に取ってはお宝なんだからとハラハラする。
母は
「知っている人ならスカビちゃんにあげちゃいなさい」と言うが
今時色紙なんてもらっても困るだけ
丁重にお断りする。
初版本のサインは、作者と繋がっているみたいでうれしいけれど
色紙はね、よくわからない。
その初版本でさえ、勢いで書いてもらったものは、
価値があるんだかないんだか、
草村礼子さんが子供会の催しに来て下さった時に
下さったサインは思い出につながるので時々眺めてはいるけれど。
つまりは、まだ思い出話をするためにしまっておいてもらうことにした。
ケアマネさんが来るまでにしまわないと
ケアマネさんは、肝心の話が出来ないで時間ばかり取ってしまうから。
案の定、母は買って来たばかりの漢字の熟語の本を読んでみせて
わずかばかりの知識を披露していた。