matsumushisou’s blog

映画やドラマと日々の生活

母と山種美術館

私と母の関係が良好になった今も同居の父とは冷たい戦争が続いており、二人の時間が辛いらしい
デイサービスのない週末になると電話がかかって来る
父が弟の家にかけると仕事で出掛けていると言うので、家にSOSの電話がかかって来た。
娘が山種美術館に連れて行こうと言うので、実家に行く
 
実家につくと、父がさっそく玄関に迎えてくれて
「母さんが肩が痛いって言うから、サロンパスを貼っていたんだけど
ちっともよくならないって言うんだ」
と訴える。
どれどれと母のベッドに行くと
「父さんが裸にした」と言って訴える
それは、片肌脱がないと湿布も貼れないでしょと
服を着せにかかると
「痛いって言っているのに、何をするの」と言うので
どこが痛いの?とあちこちを押してみると
「あんたは、いつから医者になったの?」と言うので
医者じゃなくても痛いところを探さないと服も着せられないでしょ
ここ?ここ?とあちこち押していると
あちこち押すから解らなくなったとご不満
でも
「父さんが蹴りあげたのよ。痛い。痛い」と
父に向かって恫喝する。
いやあ、いくら父が活発だとしても、体が柔らかいとしても
そんなところに足が上がる訳はない。
カンフーの達人ならまだしも。
 
父は耳が悪いせいか、達観しているのか、母に
「何か食べた方がいいよ」と食事や、ミルクをベッドに持って行く。
 
「病人じゃないのだから、食卓に来て食べなさいよ」と
私が促すと
「腰がいたいからここで食べる」なんて言っている。
 
ベッドでミルクをすする母をしり目に 
父に買って来た短パンを渡す。
いつもよれよれのジャージみたいなものを着ているからだ。
「パジャマがわりに着て。少し楽でしょ」と言うと
早速、着替えて来て見せる。
90歳にチェック柄は派手かもしれないが、上下黒なんて着ていられたら、
目立たなすぎて心配だ。
しかし、母の癇に障ったのか、
「何?派手なもの着ているのよ。みっともない。気がふれたみたいよ。気狂い。気狂い」
と口汚くののしる。
そろえて持って来たシャツに至っては、
「こんな女みたいなもの着る気?」と絶叫が止まらない。
「私が悪かった。持って帰るから、矛先を収めて」と懇願
すると
「持ってきたあなたは、悪くない。それを何の思慮もなく着る父さんが
悪い」
となんとしても悪いのは父ということになってしまう。
そのうちに父はいたたまれなくなったのか、部屋にこもってしまった。
 
とにかくこの不穏な空気に包まれた部屋にいたら、尋常ではない母の気分転換をさせようと
出かけることにした。
服を着せ、出かける間際になったら、
「父さんにお金をもらって来る」と言って父の部屋へ、
何度も行くが、寝てしまっていてお金をくれないと言うので
必ず、帰ったらお金をもらうからと言って出かける。
 
バス停が見えるところまで行くと丁度バスが止まっていて、
あと50mが届かない。
そこで、駅まで歩く。
何度も音を上げる母に娘が
「どこかで休ませてあげようよ」
駅を目の前にしてコーヒーブレイク
そこから100mくらいまた歩いて駅へ
シルバーパスもパスネットも、父が母の分も持っているので、電車やバスに乗る度に
私が購入。
切符を買ってみると、切符を入れる改札が少なく、そこも指示
切符を入れればいれっぱなしなので、私が取って降りるまで持っている。
そんなことを何回かしていたら、最後には、ちゃんと自分で
取って、自分で入れて出て来た。
認知症になっても繰り返し学習させれば覚えるのだ。
 
電車を乗り継ぎ、恵比須へ。
娘がバスに乗ろうと言ったが、駅からまっすぐなので、歩くことにした。
600mの道のりで、途中で食事でもとろうとしたが、お気に召すところがなく
美術館へ。
美術館では、いきなりカフェレストランに入って座ってしまった。
しかたなく食事。
カフェ 椿 では、簡単なそうめんや、にゅうめんの食事と和菓子が食べられる。
 
写真をみて冷たいそうめんを注文した母
が、細くて長いものがきらいだったらしい母は、少し食べただけで、お腹がいっぱいと言って食べない。
帰って来て、「お昼は何を食べたっけ」と聞かれた時に
そうめんと答えて、
「麺類が嫌いな私が食べる訳はないでしょう」と言われてしまった。
「いったい誰と食べたの?」と言われ
「私と娘と母と」と答え
「あら、大変、全然覚えていないわ。病院に行った方がいいわね。記憶障害かもしれない」と続いた。
 
さて、昼食が終わり、川合玉堂展へ。
お気に召したらしく、喜んでみている。細やかな筆遣いと生き生きとした画風に
心を打たれている様子。
ほとんどもれなく観て
ショップでは、むさぼる買い物をする私たち親子を母は店の横のベンチに座って、カタログを見ながら
待っていた。
 
山種美術館根津美術館をむすび、新国立美術館まで行かれる美術館通りがあるということなので
またまた六本木方面に向かって歩こうかと言うことになったのですが、
どこにもそれらしき案内がなかったので、
母を連れての移動には、不安を感じたので、すぐ近くのバス停から渋谷行の
バスに乗りました。
 
新国立美術館の近くに母の実家があり、行けばまた色々と思い出すかもしれなかったのですが、
また連れていくこととします。
 
そして母の家に着くと父が美術館に行ったことを知り
「覚えていないのだから無駄なことをして、歩かせて疲れるだけだろうと」
言うので、またケンカになりました。
 
そこからまた延々とたわいもないことでケンカが始まり、二時間ほどかけて
機嫌がおさまり、帰ってくることが出来ました。
 
美術館に行って何を観て来たか覚えていないにしても、すがすがしい気持ちが残っていたからこそ
二時間で収まったのだと思います。
家に帰ると娘が「おばあちゃん、美術館に行ったことを覚えていた?」と聞きましたので
帰って来てすぐは、憶えていなかったけれど、
年を取ると、運動してすぐに痛みが出なくて2,3日してから出てくることがあるでしょ
そんな感じで、フッと思い出すこともあるみたいよと言っておきました。
ほんとうに何かの刺激で思い出すこともあるようです。
孫のなかでは、一番自分が会っていると思っている娘は、憶えていてほしかったと思いますが。