matsumushisou’s blog

映画やドラマと日々の生活

母がまた施設でしゅんとしたそうだ。

弟が週末に実家に行って様子を見たところ、
ベッドに、防水シートだけ敷いてあって、しかも服は濡れていたそうだ。
 
そんな連絡を受けて、実家に行ってみると、
特に心配なことはなかったけれど、使い捨ての紙の防水シートが畳まれてあった。
使わずに畳んだのだろうか。
母が帰って来る前に再度使い捨ての防水シートを敷いて、布団を開けた時は見えないように
吸水性のいいバスタオルで目隠し
そんなことをして待っていると、母が帰って来た。
 
施設からの報告書によると、
隣の席の女性が、遠くにいる人を大声で注意したらしい。
その時に母がしゅんとしたので、スタッフさんが散歩の時につきっきりで
対応してくれたらしい。
この頃どうしちゃったんだろう。あきらかに沈んでいるのがわかるみたいだ。
 
気にするといけないので、その話はしないようにして、父は母に
甘いものばかりを勧める。食事の前にケーキ、食後に和菓子、それもペロリと食べると
次にチョコレートまで出して来た。
「いい加減にして。どんだけ甘いものを食べさせたら気が済むの」
と言うと
「だって、母が甘いものが好きなんだもの」
父ったら、そういう慰め方しかできないのかな。
あきれていると
「私、施設をよくやすむのかしら。休まないで、ぜったいに今度も来てくださいよって、みんなでいうのだけど」
と母。
「母は、施設でマドンナなんだよ。来ないと光が消えたみたいになっちゃうんじゃないの?」
私が、母の事をマドンナだ。アイドルだと囃し立てていると
父が
「深夜宅急便で観たんだけれど、なんか得意なことをするといいらしいんだ。
母は、手芸が上手だから、NHKの講座を頼んであげようかと思っているんだけど、どうかな」
と来た。
「あまり難しいのは、どうかな。折り紙とか、編み物でいいんじゃないの」
耳が遠いから、かなり会話がマイペースだ。
 
「うーん。明日、『レ・ミゼラブル』を新宿に観に行きたいんだけど、いいかな」
なんだ。唐突に
そこへ母
「あ、主役の女の子、なんていう名前だっけ」
「え?コゼット?」
 
「あ、そうそう。男の人の孫なんだっけ?男の人はちょっとした罪で捕まっていたのよね」
「そうそう。パンをぬすんだの。で、女の子は、孫じゃなくて、親のない子を引き取ったのね」
 
「パンを盗んだだけでつかまるなんてね。
「パン一切れだよ」
 
「可愛そうにね。女の人むけの映画じゃないの?」
「ん。でもフランス革命なんて出てくるから、男の人も楽しめるよ。それより、長いから
ちゃんとトイレ行ってから観ないとダメだよ」
母は、物語が好きなせいか、レ・ミゼラブルを覚えているようだ。
まだ話つづけたかったようだが、気分がすっかり落ち着いたので
帰ることとした。
話を振った父は、安倍さんの所信表明演説が聴きたいと、テレビにくぎ付け
私たちの話なんて聞いていない。
まあ、かみ合っているのかいないのか、不思議な二人だけど、
これは、これでいいのかなと思う。