matsumushisou’s blog

映画やドラマと日々の生活

ガンコ親父と可愛い母

月に一度の神経科に母を連れて行って来た。
帰って来たら、父が
「お薬を飲まないって言ってくれた?」
と言って薬の袋を見せる。
数えてみたら、12袋、母が、こんなもの飲めないと言って
薬を捨てたと言うむき出しの薬が、4袋分くらいある。
「むき出しのものは、もうあげても無理だよ」と言っておいたが、
父は、あまりきれいじゃないケースに錠剤だけいれて、しまってしまった。
とにかく月の半分は飲めていない事になる。
 
診察の時、母が先生に
「私はどこも悪くないと思うのに、どうしてここに来ているのですか?」と聞く
先生は
「物覚えがこれ以上悪くならないようにすることと、気分が落ち込まないように
する薬を処方するためだよ」
と、きちんと答えて下さる。
その他の応対は、チンプンカンプンで、
デイサービスに行ったと言ったと思えば、すぐ次には
しばらく行っていないのですが、と言う。
 
以前のような、先生を打ち負かそうと言うような荒々しさが、全くなく、
情緒は安定しているかもしれないが、ああ言えばこう言うような
勇ましい母でないのは、ちょっとさびしい。
 
病院のあと、デイサービスに送り届け、食事に一旦帰ったものの、
薬の受け取り、銀行の引き落としの確認とか、ちょっとした買い物をしている間に
母はデイサービスから、帰ってきており、
私が戻ると、すでに父と宅配の食事を取っているところだった。
 
父はすでに食事を終え、母は
まったく食事に手がついていないで食卓の前に座っていた。
私の顔を見ると、すぐにお茶の用意をしてくれようとするのだが、お湯のみを
ポットの前に置いただけで、することを忘れてしまったようだ。
「全然箸をつけていないから、あなた食べて行きなさい」と言う
ちょっと考えて、
「じゃ、半分ずつ食べよう」と言う
そして、お茶を入れてもらって、食事を始めると、
母は、父の残り物を食べると言って、父の残りのお弁当と朝の残りの
おかず、トマト、ゆで卵、きゅうりの酢の物、バナナなど、片端からお皿の
上にあるものを片付けて行く。
なんだ、食欲がないわけじゃないのだと私も持参のサラダと切干大根を混ぜながら
食事をする。
母の食事が止まったのは、父が食後の自分用の薬を取るために、処方箋を読みながら、ついでに、母の処方箋を読み始めた時だった。
「副作用としては、嘔吐、頭痛、……」
「もうやめて、そんな症状ないから、飲んでいるんでしょ。飲むたびに
そんな事言ったら、飲めなくなってしまうじゃないの」
 
父が母の体を案じているのは、わかるが、飲むたびにそんな確認をしていたら、
飲まなくていいとなるのは、いたし方ない事、
今は、デイサービスの時だけは、昼食のあと、みんなと飲んでいると言うが。
今度の認定で、度が進んだのは、やはりお薬を飲まないせいだよと
父のやさしさが、母を苦しめているのをそろそろ解ってほしい。
 
そろそろ帰ろうかと言う頃、何を思ったか父が
デイサービスからのお便りのハンコがなかった。
「あとで押してくれると言っていたが、ちゃんとやってくれるだろうか」
と、つぶやいた。
そのハンコと言うのは、来所時に何をしたか、何を食べたかの記録で、担当のハンコ、サインでもいいはずで、どうしても必要なこととも思われないが、何かあった時
には、必要だから責任と言うことで押してあるのだと思うのだが、
母は、それを聞いて
そんないい加減なデイサービスには、行かれない。国の補助で行かせてもらっているが、きちんとしたことが出来ないところなら、もう行かなくてもいい」
と父に肩を持つ。
どんな時でも父の肩を持つ昔ながらの可愛い奥さんなんだろうなと思いながら、
父の無責任な発言に私は声を大きくしなくてもいいところで、声を大きくして
話題を変える。
昔のガンコ親父って、食えないなあ。