matsumushisou’s blog

映画やドラマと日々の生活

ストレートな母

ケアマネさんが来る
 
月に一度の訪問日だ。
 
それなので母を着替えさせようとするのだが、肩が痛いと言う。
 
きっと父に小突かれたのに違いないと言う。
 
どこが痛いのか、そっと肩から背中を軽く押していく
 
肩甲骨の上の方から上腕骨頭に向かってなでていくが、ココと言うところがない。
 
お腹は太っていても肩のあたりは、肉がないからそっとそっとなでるようにして探って行くと
 
肩関節のあたりが痛いというので、自分のために持参した湿布を貼る。
 
「すぐに効いて来るからね」と言うと
 
「誰が何を聴いて来るの?」なんて言っている。(とぼけているの?)
 
「痛みがだんだん取れて来るから少し待っていて。効果が出て来ると言う方の効くだから」
 
と言って他の用事をしていると、
 
また「肩が痛い。骨折しているかもしれない」と言う。
 
場所を聞くと、「貼ってくれたところが違っているの」と言う。
 
服を脱がせて見て見るが、同じところだ。敢えていうならわずか数ミリずれているかもしれない程度だ。
 
部屋も片づけなければいけないので、自分で服を着てと言って片づけていると
 
またパジャマを着てしまう。
 
何度も何度もこれを繰り返し、「ケアマネさんが来るから着替えて」と言っても着替えてくれない。
 
「デイサービスに行くなら着替えるけれど、そうじゃないのでしょ」と開き直る
 
パジャマを脱いだり着たりしているうちにケアマネさんがいらした。
 
 
ピンポンと玄関チャイムがなると、隣りの部屋にいる父に
 
「ねえ、お父さん、玄関に出て開けてあげて」と叫ぶ。
 
耳が遠いのに無理でしょと思って、パジャマを脱がせたところで、玄関に行く。
 
ケアマネさんが来ると
 
ベッドに腰掛けて、
 
「肩が痛いのでこんな格好ですみません」と言う (さっきまでと別人でしおらしい)
 
「どうなさったのですか?前に骨折した方ですか?」とケアマネさん。
 
「夫が小突いたのです。手が上がらなくなってしまいました」
 
「まあ、四十肩なんじゃないですか?」
 
「ありがとうございます。そんなに若くないのに」ホッホッホッ
 
と言いながらベッドから離れない。
 
仕方がないので、私とケアマネさんで話を始める。
 
時々、話の内容に口をはさむので、耳はいいみたいだ。
 
ケアマネさんは、母が話に加わらなくても、時々母の方に体を向けて、「何かお困りではないでしょうか?」
 
と水を向けてくれる。
 
母は、ここぞとばかり父がいやがらせばかりすると訴える。
 
大きな音を立てたり、寝ていてものぞきに来て気が休まらないとか
 
懇切丁寧に説明している。
 
「でも頭をトンと叩かれた時は、蹴っ飛ばしてやりますの」と言う。
 
どこまでが本当で、どこまでが嘘か全くわからない話だ。
 
 
認知症とわかる前はこんな話もしっかり聴いてあげていたなと思う。
 
ケアマネさんが帰られると、父を呼んで、お腹が空いたから、どこかに食べに行きましょうと言う。
 
着替えも始める。
 
謎だ。
 
 
母の症状は、進んでいるのか回復しているのか、
 
以前なら、ケアマネさん自体を拒否。色々説明して家にいれると人物調査。
 
「どちらからいらしたのですか?お名刺をいただけますか?」とやり始め、
母の係だと言うと、
「では、夫の係の方はどなたなのでしょう?」なんて、ことになったり、とにかく
母の質問ばかりが続く。
次に、自分は今、どれほどのことが出来るのかと言う自慢に近い話。
本当に色々うるさいくらい話をしたのに、
今日は、病人の役を演じているかのように大人しかった。
 
しかもケアマネさんが帰っても、それにほとんど触れず、すぐに食事の話になった。
今回のように、私をケアマネさんが二人で書類を覗いていたら、
 
嫌な人ねとか、感じの悪い人だから、もう来ないように言ってなんてなったかもしれないのに、
なんの感想もなかった。
 
母に声掛けしてくれたからかなと思うが、それだったら、それで、あの人は気立てがいいとか
 
美人だとか、感じがいいとか
 
とにかくなんらかの感想があるのに、全くなかった。
 
こちらも自分の身が辛いので、当たり障りのない話で終わらせた。
 
今までの最短だったと思う。
 
父がケアマネさんを見送ってポストからハガキを持って来た。
 
レストランからお誕生日のプレゼントのハガキだ。
 
「あら、私、いくつになったのかしら? ねえ、父さん、いくつで死ぬつもり?」
 
「もう90だったら充分よね」
 
認知症だから、こんなにまでストレートに物が言えるのだろうか?