ついて来ちゃダメ
親が認知症になったら、何が大変って、郵便物をしまいこんでしまう
大事なものを仕舞い込んで、見つからなくなった時、再発行をしてもらうのはいいのだが、
再発行の通知を仕舞い込んでしまったら再発行の再発行になりかねない。
たとえばシルバーパス
東京なら、9月に新しいパスの交付で、古いパスと交換なのだが、
古いパスを持っていなければ、再発行をするか、10月まで待たなければならない。
じゃあ、9月に出掛けるからと再発行を頼むと、その手続きに2週間
再発行の書類が届いても、それを仕舞い込んでしまったら、また再発行を申請
そんなことをやっていたら、10月になってしまう。
とにかく今日は、そんなものの一つの書類が届く日だったのである。
しかもちょっと留守にした間に来たらしく、再配送をお願いしたら、夕方に
なってしまった。
母はえらく感謝して、何かあげるものはないかとか、送って行くとか言ったが
そこを、玄関でさよならをして帰って来た。
急行が止まる駅に行くバス停まで、急いで行く。各停の止まる駅まで行くバス停の
方が近いのだが、バスに乗っている時間も電車に乗っている時間も長くなるので、
件のバス停に急いだ。丁度バスの着く時間に着きホッとしていると、
母がにこっと顔を出す。
「ついて来ていたの?」というと、
「暗いから心配だった。駅まで歩くつもりかと思ったけどバス停で良かった」と
よくないよ~~。こんな暗い所から一人で返せないよ
「こんなところ来たことないでしょ。帰れるの?」
「まっすぐ来ただけだから、大丈夫。 帰れるから」
「まっすぐじゃないよ。少し行ったら右に行かなくちゃ。そして、少し行ったら川渡ってまた右に行くんだよ」
「大丈夫、知っている川だし。右に行くところもわかる。じゃあね」
スタスタと行ってしまいました。
え、え、え???と思っている間にバスが見えてきて、安心そうにバスを見やる母
ちょおおっと、バスはパス
バスを見送ってから、母を見ると、曲がるはずのところを曲がらずに歩いて行く
いやーもう200mは先にいるよ。
母の書類や、空のお弁当箱など、右にも左にも荷物をかかえて、母のあとを追う。
なんでっていうくらい速い
しかし、とにかく曲がらない。道はかるくうねっているが、見失ったかなと思うと
はるか前を歩いて行く母
やだ、一つ前のバス停まで来ちゃいそうと思った瞬間母が視界から消えた。
走って走って消えたところまで行くと川、
もしかして右?そう思って右に曲がると橋、取りあえず橋は渡らなくちゃと
橋を渡るためにまたまた右に曲がる。すると
またまた200m位前に母の姿(なんて速いんだ)
しかしここから家に行くには、さっきの道とは違い、何度も曲がらなくては。
と思っているうちに母が消えた。
どこにもいない
ああん、どうしょう。 右の路地、左の路地を注意しながら、母の家に着く
携帯から電話をするが、誰も出ない。
取りあえず見失ったところまで戻ろうと、最初の路地を曲がろうとしたとき
反対から来た母と鉢合わせ
「あなたが心配で○○駅まで行ってきちゃったで帰りにちょっとまよちゃって。
あなたはなんでここにいるの?」
「駅まで行って電話かけたら、誰も出ないから心配して、戻って来たところ」
「あら、虫のしらせかしらね。今度は心配だから、××駅の方から帰ってね」
家から、母の家までは、約一時間・・・今日は二時間はたっぷりかかりました。